人文・社会科学の視点から新たな「食の価値循環」を探求する全8回のレクチャーシリーズ「FoodScopes」2025年1月開講・申込開始

株式会社UnlocXは、人文・社会科学の視点から新たな「食の価値循環」を探求する、全8回のレクチャーシリーズ「FoodScopes」を、一般社団法人デサイロ、気鋭の人文・社会学の研究者13名と共に2025年1月より開講します。

現在「食」を取り巻くビジネスやテクノロジーは、日々目まぐるしい変化を遂げています。こうした変化の波を捉え、人々にとって価値あるサービスや商品を提供していくためには、もはや「フードテック」という一過性のトレンドを追い続けるだけでは不十分です。食は、生産・供給の背景となる地球環境、また社会環境などの要因や生活様式、価値観や文化的背景なども色濃く反映するものです。

この講座は、食の表層的な「トレンド」を追うのではなく、食の未来はどのようなものであるべきなのか、食が歴史的にどのような変遷を経て今に至るのか、トレンドの「深層」を捉えながら人類社会に不可欠な「食」という営みを問い直す試みです。

本プログラムでは、人文・社会科学領域の気鋭の研究者13名の導きのもと、「食」を身体、家族・パートナーシップ、コミュニティ、都市・ローカル(地域)、(ジオ・)ポリティクス、共生という6つのスケールで食を捉え直します。

詳細につきましては、ぜひこちらからお問い合わせください。

■講座スケジュール

2025年1月22日(水) 19:00-22:00(都内にて開催)

・第1回「いまなぜ人文・社会科学なのか? 「食」の「深層」をラディカルに問い直すための方法

「食」を人文・社会科学から問い直すとは、どういうことなのでしょうか? そもそも人文・社会科学とは? 初回はイントロダクションとして、トレンドではなく「深層」を問い直す人文・社会科学のレンズから食について考えるという態度、意義、方法論、近年の注目トピックについて、食にかかわる人文学と社会科学、それぞれの気鋭の研究者の方々に語っていただきます。

ゲスト:下川哲(農業経済学・早稲田大学政治経済学術院 准教授

    湯澤規子(人文地理学・法政大学人間環境学部 教授)

2025年1月30日(木) 19:00-22:00(オンライン)

・第2回 食と「身体」──食べ物への「印象」や「感覚」はいかにして形づくられてきたか?

わたしたちは食べる時、必ず「身体」を介します。食べ物は身体感覚を変容させ、身体のあり方に応じて食のあり方も変わっていく。そんな食の裏表とも言える「身体」とはそもそもどういった存在なのか? あるいは「身体」と食はいかなる関係にあるのでしょうか?文化人類学と感覚史の視点から考えます。

ゲスト:磯野真穂(文化人類学・東京科学大学 教授)

    久野愛(感覚史・東京大学大学院情報学環 准教授)

・第3回食と「家族・パートナーシップ」──私たちは誰と食べてきたのか? これから誰と食べるようになるのか?

2025年2月5日(水) 19:00-22:00(オンライン)

「孤食」という言葉があえて取り上げられるように、あるいは「食卓」という言葉に象徴されるように、食はつねに共同体、とりわけ家族・パートナーシップと切っては切り離せません。食と「家族」「パートナーシップ」はいかなる関係性にあるのでしょうか?そして、従来の家族やパートナーシップ像が変容しつつある中で、食はいかなる方向へと変わっていくのでしょうか?

ゲスト:湯澤規子(人文地理学・法政大学人間環境学部 教授)

    本多真隆(歴史社会学・立教大学社会学部 准教授)

・第4回食と「コミュニティ」──食はいかにして「集団」をかたちづくるのか?

2025年2月12日(水) 19:00-22:00(オンライン)

移民街でエスニック料理店が発展し、注目を集めるようになったイノベーティブ・レストランは、一部の界隈から「ファンダム」と形容されるような熱狂的な人気を集めます。すなわち、食のあり方は、食べる人、つくる人の属するコミュニティのあり方に大きく左右されると言えるでしょう。今回の講義では、「移民」や「ファンダム」の観点から、これからの食とコミュニティのあり方について考えます。

ゲスト:安井大輔(フードスタディーズ・立命館大学 食マネジメント学部 准教授)

    柳澤田実(哲学・関西学院大学神学部准教授)

・第5回 食と「都市・ローカル(地域)」──私たちはどんな場所で、何を食べてきたのか?2025年2月19日(水) 19:00-22:00(東京都内にて開催)

今後ますます都市への人口集中が進むことが予想される一方で、地方移住も珍しいことではなくなりつつあります。都市や地域のあり方に応じて、人々の食はどのように変わっていくのでしょうか。〈迂回する経済〉やガストロノミーの観点から考えていきます。

ゲスト:吉江俊(都市論・都市計画学  早稲田大学建築学科講師/博士(工学))

藤田周(文化人類学 東京外国語大学 TUFSフィールドサイエンスコモンズ 特任研究員)

・第6回 食と「(ジオ・)ポリティクス」──国家はいかにして食を規定するのか?

2025年3月5日(水) 19:00-22:00(オンライン)

食のあり方は、国家のあり方に大きく左右され、食料安全保障など「政治」の問題にも大きくかかわります。食と国家、そして地政学的な条件はいかなる関係にあるのでしょうか。「給食」といったミクロな観点から、「アンチ・ジオポリティクス」といったマクロな地政学の観点まで横断して考えます。

ゲスト:藤原辰史(農業史・京都大学人文科学研究所准教授)

    北川眞也(地理学者・三重大学人文学部准教授)

・第7回 食と「共生」──マルチスピーシーズな食はいかにして可能か?

2025年3月12日(水) 19:00-22:00(オンライン)

食というのは、人間ならざる大地や動植物と関係性を切り結ぶ営みでもあります。昨今は「マルチスピーシーズ」という言葉など、人間以外の存在との共生のあり方も検討が進められていますが、これらの考え方は私たちの暮らしと切り離せない「食」から考えるアプローチは有効なはずです。

ゲスト:福永真弓(環境倫理学・東京大学大学院・新領域創成科学研究科 准教授)

    太田和彦(食農倫理学・南山大学総合政策学部・総合政策学科 准教授)

・第8回総括:食をめぐる価値循環の再構築に向けて

2025年3月19日(水) 19:00-22:00(東京都内にて開催)

ここまでの6回の講義でのインプットを踏まえて、最終回では自社製品や商品のバリューチェーンの再構築を試みます。最終発表の内容は、ゲストに講評も担当いただきます。

ゲスト:下川哲(農業経済学・早稲田大学政治経済学術院 准教授

    藤田周(文化人類学 東京外国語大学 TUFSフィールドサイエンスコモンズ 特任研究員)

▪️各回共通の登壇者

岡田弘太郎(おかだ・こうたろう)
編集者。一般社団法人デサイロ代表理事。『WIRED』日本版エディター。クリエイティブ集団「PARTY」パートナー。スタートアップを中心とした複数の企業の編集パートナー。アーティスト・なみちえのマネジメントを担当。研究者やアーティスト、クリエイター、起業家などの新しい価値をつくる人々と社会をつなげるための発信支援や、資金調達のモデル構築に取り組む。1994年東京生まれ。慶應義塾大学にてサービスデザインを専攻。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」選出。Twitter: @ktrokd

・小池真幸(こいけ・まさき)
De-Silo 編集統括。編集者。人文・デザイン・暮らしといった領域を中心に、研究者やクリエイターと協働しながら、ウェブメディアから紙媒体まで幅広くメディアづくりやコンテンツ制作に携わっています。最近の活動場所:PLANETS、designing、DIG THE TEA、MIMIGURIなど。

・岡田 亜希子(おかだ・あきこ)
株式会社UnlocX Insight Specialist。フードテックを社会実装していくためのインサイト構築に取り組む。ビジネス戦略の視点、テクノロジーの視点、人文知や哲学の視点を重ね合わせ、人類の未来にとって意義のあるフードテックの本質探究に挑む。McKinsey & Companyにてリサーチスペシャリストとして従事。2017年シグマクシスに参画しGlobal Food Tech Summit 「SKS JAPAN」を創設。現在はUnlocXのInsight Specialistとしてフードイノベーション関連のインサイト構築・発信に従事。共著書に「フードテック革命」(20年/日経BP)